口で食べること、そして、さらなる歯の働き

 歯の研究会に出席して、新潟市桑名病院言語聴覚士(当時)の宮岡里美先生と東京医科歯科大学非常勤講師で歯科医師の福田徳治先生の示唆に富んだ話を伺いました。

 医学と歯学は、それぞれ別の道を歩んできて、ほとんど交流がないというのが現状です。しかし今回は、口の機能が、脳やからだの機能と密接に関係をもっていることを改めて認識しました。

 口から栄養を摂ることができないために、中心静脈栄養(IVH)をしている人でも、一口だけでも自分の口で食べるようにしていると、元気になる力が出てくるというのです。食べ物を摂取することには、からだの多くの機能が関わっています。咀嚼は、脳を刺激して脳の血流を増やし、表情を豊かにして生きる力を引き出すのに関係し、三叉神経を刺激するとしないでは、脳の血流が大幅に変わってくるそうです。

 少しでも口から食べるように努力を続けた人のなかには、もはやIVHから離れるのは無理だと思われていたのに、一口から二口、三口と口から食べる量がだんだん増えるにつれて体重が増加し、ついにはIVHなしで生きられるようになった例が多いといいます。また同じようにして、寝たきりのお年寄りが立って歩けるようになった例も紹介されていました。

 さらに驚いたのは、寝たきりのお年寄りに入れ歯を入れてあげたら、その瞬間から立って歩きだしたというのです。寝たきりで流動食のようなものを食べているのだから、入れ歯は必要ないと思いがちです。しかし、歯は物を食べる以上のことをしているのです。よく合った入れ歯をいれたその瞬間、顔に生気がみなぎり、顔が引き締まって、ついには歩く力が生まれるということです。その症例の数々がビデオで紹介されていました。

 そのほかにも、認知症の老人が入れ歯をつくって装着したら、口をモグモグさせなくなって目に光がみなぎり、自分の名前を思い出すことができたり、時計を見て時刻を言えるようになった例もあります。口中に歯がある、あるいは口が本来の形を取り戻すということが、これだけ生きる力と繋がっているという証なのです。   以上です・・。

 

いや~、意外な視点でした。あと2回「歯」が続きます。楽しみです。口から食べられることに感謝して、よく咀嚼しながら、副交感神経優位の状態で食事を楽しみたいものです。   温王子でした・・・